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海外チャレンジ

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コーチ海外研修inイタリア

今夏、ゴールアシストコーチ海外研修の一環として川上コーチがイタリアへ指導者研修に向かいました。
以下川上コーチのレポートです。
◆遠征国:イタリア(ローマ・ミラノ・フィレンツェ)
◆研修期間:8月28日~9月2日

今回のイタリア研修の中で、日本で見てきた選手たちとイタリアの選手たち、私や日本の指導者とイタリアの指導に関して、下記3点で違いを感じ、学びました。

①DF時のボール保持者に対するアプローチの距離
②ファーストタッチ・体の向き
③戦術指導に関して

①DF時のボール保持者に対するアプローチの距離
イタリア人選手と日本人選手を比較した時にボールを奪える距離までアプローチ・最初のアプローチが遠い場合はボールを持っている選手との距離を詰めて奪おうとするイタリア人選手に対して、日本の選手は向かれないように距離を保ち抜かれないようにして、相手がミスするまで待っていると感じます。
視察で伺ったシレア国際トーナメントに参加していた日本のチームと海外のチームとの比較やJリーグと欧州の主要リーグとの比較をしていると、ボールへのアプローチをしやすいように守備戦術が海外のチームは浸透しているからこそアプローチの距離が近いのもありますが、日本のチームや選手は守備戦術を理解してもアプローチの距離が遠いと思います。その結果、日本トップクラスの選手たちが海外のチームを相手にした際に「守備ができない」と評価されると思いました。
だから、「抜かれるな!」「飛び込むな!」などの言葉より「奪いに行け!」「寄せろ!」などの言葉を選手に伝えるべきなのではと考え始め、また、もっと違う言葉あるのではと疑い始めました。
守備戦術の理解が大切だと私も思いますが、ボールを奪いに行くアプローチを小さいころから習慣化させることが大切だと思いました。

②ファーストタッチ・体の向き
雑誌などの記事や海外遠征に帯同したコーチの方から「日本人は外国人に比べてテクニックがある、上手い!」などの言葉をよく見聞きします。実際に視察したU12~U19年代のイタリア人と日本人を比較しても、日本人の方が『ボールフィーリング』が上手いなと思いました。「日本人は外国人に比べてテクニックがある、上手い!」などの言葉は一部間違っていないなと思いました。しかし、ゴールアシストの選抜チームや今回のシレア国際トーナメントを見ていても、海外のチームの方が攻撃を有利に進めているシーンが多いと思いました。外国人と骨格や筋肉の質の違いもあるかと思いますが、日本人選手との違いは「ファーストタッチ・体の向き」だと思いました。状況に合わせていきたい方向に体を向け、ファーストコントロールをしているイタリア人に対して、状況に関係なく体の向きとファーストコントロールが常に一定方向・場所になる日本人の違いだと思いました。
練習見学をしたフィオレンティーナとローマではパス&コントロールのトレーニングを試合で起こりそうな場面を想定してのトレーニングをどの世代も繰り返し行っておりました。敵のいない中のトレーニングでしたが、コントロールする方向を癖づけて、敵のいる中でのトレーニング→ゲームの流れでやっておりました。だから、足元に止めるより行きたい方向への癖づけができているのではないかと思いました。ボール扱いが器用な日本人が試合の状況に応じたファーストタッチと体の向きの癖づけをできれば、ボール扱いでの日本人の長所が生かされると思いました。その長所を活かせるトレーニングを考え、選手たちに伝えていかなければと思います。

③戦術指導に関して
今回のフィオレンティーナ、ASローマ、ヴィーゴル・ペルコンテの3クラブの練習での戦術指導の徹底ぶりを見て、戦術指導の大切さを学び、戦術指導の目的とその方法論を考え直さなければと思いました。
フィオレンティーナでの練習見学の際、ある場面でコーチがフリーズを入れていました。私はボール保持者に寄せたA選手のアプローチの甘さを指摘し、アプローチ前のポジショニングを改善するかと思いましたが、逆サイドにいたB選手のカバーリングのポジショニングを指摘していました。その後、B選手はカバーリングができている場面もありましたが、同じミスを繰り返した場面では、そのミスが起こるたびにその選手は罰走を命じられていました。私も見ていて彼のポジショニングは少し気になりましたが、ピンチになることはなかったので、そこまで気になることかなと思いました。そこで私はこの練習を担当していたコーチの厳しさを学ばなければならないと思いました。私は罰走をやらせたことを良いことは思いません。しかし、ピンチにならなくても一人の選手のポジショニングの重要性を伝える姿勢が必要だと感じました。
ASローマでは、練習見学の前に育成関係者の方と年齢による学べる事柄の異なるため、ゲームの人数を年齢によって変えるべきだと学びました。「5,6歳ごろは自分とボールの関係を認識することで、頭の中がいっぱいになるから、トレーニングはコーディネーションと1vs1の練習を中心に行い、ゲームは基本1vs1で増えても、2vs2が選手たちは多くのことを学ぶ、獲得できる。それから年齢が上がるごとに1~2人増やしていき、11~12歳までに11vs11に持っていく必要がある」とおっしゃっておりました。また守備戦術を学び始める段階について質問した時に「ポジションを固定して2vs2、3vs3、4vs4、、、とゲームをする人数を増やす中でカバーリングやポジションごとの役割などを学んでいく。ポジションの配置を決め、ゲームを行うことが戦術を学ぶことになる。」とおっしゃっておりました。ゲームの人数が少ない時から配置をきめられ、戦術を学んでいくことを年齢が低い時からやっている選手の戦術理解度は上がると思いました。ゲームの中で基本的な戦術をどう伝え、選手たちに学んでもらうかを工夫するべきだと思いました。
②に出てきた状況に合わせた体の向きとファーストタッチのトレーニングで、パス&コントロールをする中でサポートの仕方やタイミングを計ることなどを意識させ、繰り返しトレーニングを行うことでも戦術を学び、動きの癖がついていると思いました。フィオレンティーナU15の試合観戦の際には前日練習で行っていた動きが頻繁に出ていて、その動きがチーム全体で連動し、相手より速く動けていたため、フィオレンティーナU15が試合を支配していたと思います。
今回の研修の中でイタリアの戦術指導を見られたことが収穫だと思いました。なぜなら「ボールフィーリングの上手い選手」もそうだが、「サッカーの上手い選手」を育つために何をするべきかを学べたからです。しかし、今回の学んだ練習メニューと行っている選手と私が関わっている選手の課題は異なるため、目の前にいる選手の質に合わせた指導や練習メニューの変えて、成長させられるようにしなければと思います。

以上の3点でイタリアと日本の違いを私なりに感じました。
上記の3点もサッカーの勝敗を決める「ゴールを決め、ゴールを守る」がベースにあってのことだと思います。「ゴールを決め、ゴールを守る」という基本を大切にして、目の前の選手に必要なこと指導していき、「サッカーの上手い選手」を育てられるように日々のコーチングに励みたいと思います。

最後にイタリア代表専属の医療スタッフの方の言葉がとても印象的で私の仕事の重要性を感じたので、紹介させていただきます。
「プロサッカー選手になるには『モチベーション、スキル、良い指導者』の3つが必要だ」