未来のJリーガープロ選手へ

 

プロの試合を300試合以上経験して・・


ー 試合で活躍するために必要な考え方は?

 

45分ハーフの試合90分のうち、ボールに触っている時間はせいぜい2分ぐらいです。

残りの88分はボールに触っていません。この88分をどう考え動くことが出来るかでボールに触る2分が4分になるか、決定的な仕事をできる数が増えるかが変わってきます。

したがって、88分の過ごし方をトレーニングしていく必要があるのです。このトレーニングは、頭脳(考え方)と実際の動き方の両方をしっかりと行うことが重要です。

 

ー プロのサッカーとアマチュアのサッカーの決定的な違いは何ですか。

 

アマチュア時代は、好きでサッカーを楽しむことを優先できます。もちろんプロも日々のサッカーを楽しめる人がプロとして活躍し続けられると思いますが、プロのサッカーは『職業としてのサッカー』です。

プロとして1人1人が『サッカーで生計を立てていくんだ』と覚悟を決めて、プロの試合の中で輝き続けられる技術・スキルを飽きることなく磨き続けることが出来るかどうかが大きな違いだと思います。

アマチュアでもそういった『探究心』と成果を出すことに執着心を持つ若者がプロの世界へと入っていけるのではないかと思います。

 

ー チームの成果と個人の成果とどちらが大事ですか。

 

これも少しアマチュアとプロの違いがあるかもしれません。
あくまでチームスポーツですからチームの勝利を優先すべきです。

そのために滅私的に貢献した動きももちろん必要となります。ただ、プロの場合、チームが優勝しても自分がその時にベンチにいれば、シーズン終了後解雇になることもあります。したがって、まずは、自分が試合に出る、そして監督の要求を満たしながら活躍する、そして試合に出場し続ける、そしてチームが成果を上げるといった考え方が必要になってきます。
私自身は、自分が試合に出場して、「サポーターの中で、1人でもいいから僕のプレイを見たいと思われたい」と思っていつもプレイしていました。

 

ー 多くのサッカーをしているアマチュアの選手が、プロになることを夢見ていますが、なぜその選手たちはプロになることが出来ないのでしょうか。

 

『プロのサッカーとは』『プロになるために必要なことは』をもっとアマチュア時代に自ら好奇心持って学び、また教えてくれる指導者がいて、もっと知ることが出来ていれば、サッカーそのものがもっと楽しくなるし、サッカーを深い探究心持ってやり続けたいと思う気持ちが長持ちしたのではないかと思います。

 

現横河武蔵野FCヘッドコーチ吉田康弘コーチ

ー プロのサッカーはメンタルが強くなければいけないとよく言われますが、そのメンタルは具体的には何を指すのでしょうか。またどうすればそれが身につくのでしょうか。 

 

すべての仕事がそうですが、楽で成果が出やすく楽しい場面ばかりではありません。どんなにつらくても予想外のことが起こっても『めげずに、プラスで考えて、目標作ったり、良いイメージを持って、執着心持って目の前のサッカーをやり続ける』継続性を持つこと、またふてぶてしさも必要かもしれません。
必要なメンタルを具体的に言うと、『我慢強さ』『まじめに物事に取り組む』『研究して工夫し続ける』といった3つでしょうか。


これらが身についている選手は技術が少々足りなくても、運動量が少なくても、フィジカルで劣っていてもプロとして立派にやっていける可能性が高いと思います。逆に言うと、どんなに天才的プレイヤーと言われるアマチュア選手も、上記の3つがないとプロとして活躍し続けることは難しいと思います。

これらの3つは、高校生になるぐらいまでに家庭で、また育った環境で培われてきたものかもしれません。

もう一つ重要なことは、新しいクラブに入るとき、指導者につくとき、プロになるときに『自分の過去の成功体験や価値観のゆがみをいったん捨てる』ことです。
頭の中に物事を吸収する箱があったとします。その箱の中が過去の成功体験や価値観でいっぱいになっていると新しい考えを受け入れるスペースがありません。いったんオールクリアにするぐらいに(電卓でいうとACボタンを押して、計算していたものをいったんゼロにするぐらい)空っぽにして、どんどん新しい世界の考え方やり方を吸収していくことが大事です。
キーワードは『潔さ』『こだわらなさ』『柔軟さ』です。
新しい環境で1年間そのクラブや先輩指導者の教えだけをひたすら実践しても、過去の自分の良いものや良い価値観は一切失われてはいません。ミックスされ融合され、2年目3年目に大きな力に変わっていきます。学ぶ姿勢を確保するための精神的な箱を風通して良くするというイメージだと思ってください。

 

(「プロで活躍するための基本OS」より抜粋)

プロで活躍するための基本OS

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プロフィール

1969年生まれ。広島県広島市出身。
東海大第一高校で選手権全国優勝を経験。


明治大学を経て、1992年に鹿島アントラーズへ入団。
その才能は注目を集め、『ジーコの後継者』と呼ばれた。
清水エスパルス⇒サンフレッチェ広島でJ1・311試合出場。


現在、横河武蔵野FC監督。
2012年度は、天皇杯で昨年覇者のFC東京に競り勝ち、4回戦進出中(2012年11月現在)

寺田周平プロフィール